マージおじさんとボグヴァーツ特急  著:日下部 峰雪


第19話 お菓子

 取り巻きは初めのうちこそガヤガヤやっていたが、そのおじさんの様子を見ると徐々に静かになっていった。

 やがて、取り巻きの中から一人の下級生が、持っていたお菓子をおずおずと差し出した。すると周囲の皆もそれに倣って、あわれなマージおじさんに食べ物を渡しだした。おじさんはそれを受け取ると夢中で喰らいついた。

 こうしておじさんの気持ちも落ち着いていくかに見えたが、途中でとんでもないことが起こった。

 まったく魔法世界のお菓子というものは恐ろしい。まずはバーディ・ボッツの百味ビーンズである。それにとんでもない味のものが混じっていたのだ。極彩色のオレンジのそれが何の味であるのかは…恐ろしくてとても言えない。

 ビーンズを口にしたおじさんは一瞬の沈黙の後、咆哮をあげたが、その時にはおじさんの舌が三倍ほどに膨れ上がり始めていた。…ベロベロキャンディである。

 一瞬にして怒り心頭に発したおじさんは生徒たちに手当たり次第に襲いかろうとしたが、その刹那、おじさんの体が今度はみるみるコウモリのように変形してゆく。おじさんはひとしきり飛び回るうちに完全なコウモリになり、その姿のままめちゃめちゃに怒って暴れまわり、半時ほどしてようやく元に戻った。

 元に戻ったもののおじさんの怒りは収まろうはずもない。
「なんじゃあこりゃああ!!貴様らあ、このならず者どもめ!!なめとんのかぁ!!」

 あまりの剣幕に取り巻きが一斉に後ずさる…、しかしおじさんの怒りは再び遮られた。汽車のアナウンスが、ボグヴァーツが近いことを知らせたのだ。

 生徒達はてんでに荷物を取りにコンパートメントに戻っていき、取り巻きは瞬く間にしぼんでゆく。

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