マージおじさんとボグヴァーツ特急 著:日下部 峰雪
第17話 ボグヴァーツ特急
ボグヴァーツ特急はいつ見ても立派だ。お世辞抜きでハリーはそう思う。少し抑え目のワインレッドの車体に白銀のフレーム、ところどころについている金色の星型の中に、大鎌とハンマーを組み合わせた紋章が燦然と輝いている。
そして二つか三つの客車車両ごとに、76.2o砲が二門装備された最新の装甲列車砲列が連結されており、さながら陸上の戦艦とも言うべき偉容を誇っている。
ハリーはロンと同じコンパートメントにトランクを押し込み終えると、見るともなしにコンパートメントの中の絢爛たる内装を眺めて、疾走する列車に揺られ寛いでいた。
ボグヴァーツ校の生徒を満載した列車はこの上もなく賑やかである。しかしハリーは、なぜか騒ごうという気にはなれなかった。虫の知らせというやつだろうか。すぐ外の廊下には、蛙が逃げ出したとかで慌てている上級生や、今年の新入生にオーガーの子供がいると騒いで見に行こうとする生徒達などが、様々に入り乱れていた。
「ねえ、ハリー。」
不意の呼びかけにハリーが目を移すと、ロンが廊下の方を見ている。
「何?」
ハリーはけだるそうに答えた。
「その新入生のオーガーってのを見に行こうぜ。僕は今まで実物のオーガーなんて見たことないんだよ。ね?」
しかしハリーはいま動く気にはなれなかった。動きたくなかった。
「別にいいよ。どうせ嫌でも学校で見ることになるんだしさ。わざわざ人ごみの中にもみくちゃにされにいく必要もないし。」
しかしロンはなおも食い下がる。
「どうしたんだい、ハリー?列車酔いかい?気分でも悪いのかい?」
「それもあるけどね、とにかくなぜか今は気が乗らないんだ。行くなら君一人でいけばいいじゃない。」
「ちぇっ、つれないな。いいよ、僕も行く気が失せた。それより魔法使いトレーディングカードを見てみようぜ?とりあえず10パックほどある。」
「うん。」
「どれ…、おっ!いきなり“最後の吸血鬼カミラ=イスヴェチノワ”か。レアいんだぜハリー、これ。」
なるほど、見ればいかにも古風な絵が、意地の悪そうな目をこちらに向けている。
こうして二人はカードに一喜一憂しながら(魔法生物“地獄の帝王エスターク”のカードが六枚ほどダブってしまったが)、取り留めのない話をして、まあそれなりに列車での旅を楽しんだ。
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