マージおじさんとボグヴァーツ特急  著:日下部 峰雪


第9話 道すがら

 ダーズリー家から帰る道すがら、マージおじさんにはどうにも腑に落ちないことがあった。

(…どうも背後で通行人があたしを見て笑っているような気がする。)

 別段、それ自体はよくある事で珍しい事でもなんでもない。愉快な体型と髭を蓄え、好んで原色のスカートをはくマージおじさんが通りを歩けば、一人二人笑うものがいても不思議ではあるまい。

(でもねぇ、今日は数がいやに多いじゃないか)

 今でこそ見る影もないが、マージおじさんは元軍人である。数多くのゲリラの襲撃をかいくぐって生き延びてきた野生的な勘は、半端なものではなかった。 常に周囲に神経を張り巡らせる癖のついてるマージおじさんには、わずかな周囲の異変(反応)といえど何かがあるのでは?と疑問を抱かせるには十分である。

 しかし、今はさっさと家に帰って愛犬たちの面倒を見てやりたかった。 それにもうひとつ気になる事があった。

(附けられてるな)

 足音の僅かな気配からおじさんは尾行されていることを察知し、なぜ尾行されるのかをあれこれ考えていた。だがその理由に思い当たる節のある筈もなかった。ともかくその足音に集中していた為、一般人の反応がどうであろうとどうでも良かった。 しかも家につく頃にはいつの間にか尾行の気配も消えてゆき、おじさん自身、自分がさっきまで何を考えていたのかを考え出す始末であった。

 マージおじさんの家は目を瞑っていても分かるくらいである。 というのも、まず獣くさい。そして近所迷惑にも犬たちの鳴き声がこだましている。マージおじさんは犬のブリーダーをして生計を立てているのだった。 敷地内を埋め尽くしている犬は、みなマージおじさんの愛犬である。 かわいい犬たちに囲まれて餌をやり、ブラッシングしてやり、不在時のお手伝いさんの餌のやり方にけちをつけているうちにその日は暮れ、そのままベッドに入るとぐっすり眠ってしまった。

第8話<<                                             >>第10話